第72戦(7月8日)

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ジョンソン、奇跡弾

代打逆転サヨナラ3ラン

 神様仏様ジョンソン様や。だれもが敗戦を覚悟していた9回、ジョンソンが代打逆転サヨナラ弾。ベンチ前でナインから手荒い祝福を受けて「今までの野球人生で最高の瞬間です」。いつもは冷静な野村監督も「ディス・イズ野球や」と珍しく興奮した。これで9日からの中日叩きに弾みがつくこと間違いなし。最後にひとこと、ありがとうジョンソン。

7月8日・甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
ヤクルト
阪 神 5X
【勝】舩木【敗】高木
【本】スミス14号(ソロ=山崎)、 ジョンソン18号(3ラン=高木)

球団初、4点差ひっくり返した

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 快音は瞬く間に、大歓声にかき消された。ジョンソンが何度も何度も、右腕を天高く突き上げた。甲子園に奇跡が起こった。代打逆転、しかもサヨナラホームランだ。もうだれもが夢心地。新庄が飛び蹴りをかませば、ブロワーズが羽交い締め。もう、もみくちゃだ。3連敗寸前、地獄の縁からチームを救い上げたヒーローを、最後に野村監督が思い切り抱き締めた。

 「打った瞬間、自分でも興奮して、何が何だか分からなかった。アドレナリンが全身を巡ってるよ。野球人生の中で最高の気分、最高にハッピーだ」。

 お立ち台の声が奮えていた。9回新庄の適時打で2点差に迫り、なお1死二、三塁での代打。高木のカーブを完ぺきに捕らえ、18号を右中間に突き刺した。過去サヨナラ本塁打はマイナー時代にあるが、メジャーでは未体験。しかも代打逆転となれば、88年の田尾以来11年ぶり。そして阪神助っ人では、あのバースにも成し得なかった史上初の快挙だった。

 意地があった。この日、20試合ぶりにスタメンを外れた。ヤクルト先発は石井一。右に対しては3割2厘、16本塁打を誇るが、左投手には1割7分4厘、1本塁打の苦手ぶり。前日も左腕ハッカミーに3の0に押さえ込まれ、野村監督は断を下した。「悔しいけど、仕方ない。結果を出せてないんだから…」。その苦手左腕、高木を痛打した1発は、まさに意地の結晶。勝利以上に意義ある1発だった。

スタメン
阪 神ヤクルト
坪 井真 中
和 田宮 本
矢 野佐 藤
ブロワーズ古 田
八 木ペタジーニ
新 庄スミス
今 岡池 山
塩 谷馬 場
山 崎石井一

 そのJ砲が刺激としているのが、野茂(ブリューワーズ)の姿だ。パイレーツ時代の96年、ドジャース野茂と対戦。その豪球を、右中間に突き刺した。しかも当時ド軍三塁手がブロワーズだった。「今思えば不思議な感じだね。でも野茂の挑戦する姿、スピリッツは学ぶに値するよ」。数度の解雇という荒波を乗り越え、伝え聞く野茂のスタイルに共感する。日米の違いはあれど、同じ異国で夢実現のために奮闘する姿に、「自分も勇気が沸く」と熱っぽく話すのだった。

 9回裏のスコアボードには「5X」が輝いていた。これは猛虎史上初の快挙でもあった。それを運んだのももちろん、J砲の一撃。ズバリ起用、ズバリサイ配が的中、救われた野村監督も笑いが止まらなかった。「よう打った。それにしても、よう打った。カーブしかない。カーブを狙えと言っとったんや。真っすぐを待っていたら、その前の高めの直球に手が出てた」。9日の中日野口をはじめ、今後の対左にはJ砲を使うかどうか、野村監督はうれしい悩みを抱えることになりそうだ。

 「この1勝は大きい。いいムードでナゴヤに行けるよ。ナイス、サヨナラホームラン!」。クロマティの著書で覚えた「サヨナラ」を連呼し、9日からの首位中日戦を前にJ砲も雄叫び。頼もしい男がこよいまた、たくましさを増した。

<写真=9回1死二、三塁。「ここで打ったら」の虎党のアツーい期待にジョンソンがものの見事に一発回答。歓喜のガッツポーズ。サヨナラ大アーチに心底しびれました>

「興奮したで」ノムさん声上ずり

 さすがの野村監督も、鳥肌が立った。大ヒーローのジョンソンを両手を広げて迎え入れた。頼もしい助っ人の肩に手を回し、腰を何度もポーンとたたいた。「こんなことあんにゃあなぁ。久しぶりに興奮したで。ディス・イズ・野球や。最後まで分からんな」。常に沈着冷静な野村監督が、珍しく声を上ずらせ、右ヒザをガクガクさせていた。

 「負けムードの最たるもの。向こう(ヤクルト)は先制、中押し、ダメ押しと理想的な展開やろ。野球はゲームセットまで分からんというが、それを地でいく試合やったな」

 ヤクルト石井一に8回まで14三振。負ければ4月15日の横浜戦以来の同一カード3連敗。貯金はゼロとなる大ピンチ。それを奇跡的なサヨナラゲームで踏ん張ったのだから、アドレナリンが逆流してもおかしくない。

 「大きな1勝? 明日から中日戦だけにな。しかし、こういうこともなければやっとれん。バカバカしくて、毎日グチばっかりこぼして…。それにしても今日はゆっくり眠れるよ」

 これほどご機嫌で、ホオが緩みっぱなしの会見も珍しい。9日からの首位中日戦へ向けて、最高の弾みがついた。

助っ人初、代打逆転サヨナラ弾

 ▼阪神の代打逆転サヨナラ本塁打は、1988年(昭63)9月11日に田尾が巨人戦で記録して以来、11年ぶり。またこれがセ・リーグ史上50本目の代打サヨナラ本塁打になった。

 ▼ジョンソンの代打逆転本塁打は阪神の助っ人史上初。代打本塁打は96年5月1日に横浜戦(甲子園)でグレン(同点から満塁サヨナラ弾)ら過去9人が記録しているが逆転サヨナラの冠がつくのはジョンソンが初。

 ▼阪神が9回に4点差を逆転して勝った。これは64年を数える球団史上初。1936年(昭11)に初の公式戦を戦って以来、8日で7725試合目。ジョンソンのひと振りで通算成績は3882勝3602敗241分けになった。

土壇場で新庄、ブロ砲つないだ

八木「最期まであきらめない」

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 ブロワーズ、八木、そして新庄。それぞれの意地が、奇跡の逆転劇を演出した。それまでノーヒットだった3人が、土壇場で大仕事。三振記録を塗り替えられかけていた石井一を攻略し、ジョンソンのサヨナラ弾を導いた。

 「みんなが、後ろにつなごうと思っていたんじゃないかな。最後まで、あきらめる雰囲気はなかった」。前選手会長の八木が、ナインの気持ちを代弁した。

 4点ビハインドの9回、先頭矢野が四球を選んだ。続くはブロワーズ。前の打席では、低めスライダーに三振。「(石井一の)決め球はスライダーだったから」。その勝負球を狙っていた。8球目。やっと、そのスライダーがストライクゾーンに来た。きっちり左前へ運び、反撃機運を盛り上げた。

 八木も静かに燃えていた。今季初めて一塁スタメンで起用されたが、いずれも走者を置いて、3打席凡退。だが、ここぞという場面で、“神様”の本領を発揮した。しぶとく4球ファウルで粘り、四球で歩いた。

 ここで、ヤクルト・ベンチは石井一から広田にスイッチする。

 「石井クン以外ならだれでもよかった。石井クンには、全然タイミングが合わなかったから」

 新庄の正直な告白だ。石井一の前に、3打席3三振。いずれもスライダーにバットが空を切っていた。石井一を打つ自信はなかった。だが、この継投のおかげで、2番手広田への優越感を抱くことができた。2―1からの内角直球を左前へ。2点を返し、サヨナラの4文字をたぐり寄せた。

 石井一の前に、8回までに14三振を喫していた。セ・リーグ記録まで、あと3。3者三振ならばタイ記録。実際、8回には3者三振を食らっている。そんな『屈辱』も脳裏をかすめる状況で、ブロワーズ、八木は2ストライクと追い込まれてからの逆襲。この驚異的な粘りがある限り、猛虎の快進撃は止まらない。

<写真=あっぱれジョンソンに興奮トラナインが手荒い歓迎だ>

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9回古田、痛恨エラー

 9回無死一、三塁から八木の一塁側ファウルゾーンに上がった飛球を、古田とペタジーニがぶつかって落球(記録は古田の失策)。この後八木は四球を選びサヨナラの布石となった。

 ヤクルト古田「直前に声は聞こえたけど、もうよけられないし、捕りにいかずに落とすより、ぶつかってでも捕りにいった方がいいと思った」

<写真=阪神サヨナラ劇の伏線はこれ。9回無死一、三塁で八木の捕邪飛がポロリ。命拾いでこの後満塁、そして…>


今岡きっちり仕事

 今岡も渋い活躍で勝利に貢献した。2点差に詰め寄った9回無死一、二塁。前進守備バスターを決めて1死二、三塁の好機を作り、続くジョンソンの大逆転サヨナラアーチを呼んだ。「あれはサイン通り。勝ててよかったです」と久々に興奮の笑顔。4回2死二、三塁でも石井一から追撃の左前2点タイムリーを放ち、恐怖の7番打者ぶりを発揮。地味ながらも価値ある仕事ぶりで、存在感を示した。

(37勝35敗)

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