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新庄、敬遠球をサヨナラ打死闘12回…首位守った
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敬遠球打つ練習してた
その瞬間、鼓膜が破れるようなごう音がマンモスに響いた。信じられないシーンに5万5000観衆は驚き、次の瞬間、劇的勝利にシビれた。新庄が、敬遠の球を打って、サヨナラだ。 同点で迎えた延長12回裏、1死一、三塁の場面だ。新庄は6度目の打席に入った。8回の起死回生の同点9号ソロを含め、既に3安打を放ち、今季6度目の猛打賞を決めている。もし二塁打が出ればサイクル安打だ。だが巨人ベンチが勝負するはずがない。捕手・光山は当然のように立ち上がった。 だが1球目に異変が起こる。敬遠にしては槙原のボールが低い。ここで新庄は一塁ベンチを見た。じっと見る師匠・柏原打撃コーチと目で合図した。「打て」…。その直後の2球目だった。敬遠にしては高さ、コースともに外し切っていない甘い球が外角に来た。「これだ!」 しなやかに全身を伸ばし、新庄が大根切りのようにバットを振った。ガツンという音を残した打球は前進守備の遊撃・二岡の左を転がり、左前へ抜けていった。4時間41分の死闘に決着がついた。 自ら「ボクは超人的」という新庄ならではの悪球打ちによるサヨナラヒット。だがその裏にはしたたかな計算が隠されていた。 新庄の秘話その1 敬遠の球を狙ってました。前に敬遠された後、柏原さんと相談して、打てる球が来れば打っていいかって。柏原さんも敬遠の球を本塁打したことがあるし。だからこないだの練習日(10日)、高いのを打つ練習もしてたんですよ。 新庄が今季初めて敬遠されたのは9日の広島戦(大阪ドーム)の7回。このときにひらめいた新庄は再びあるかどうかわからない機会を狙った挙げ句に練習までしていた。 新庄の秘話その2 甘い球が来るうようにしないといけないので打席の後ろの方に立っていたんです。打つときにいつもの足のところに踏み出した。だから打席からははみ出してないでしょ。初球が低くて光山さんも槙原さんに「抑えて、抑えて」みたいな感じだったんでいけるなと思った。
それでもコースを外れた球はむやみに打ってもヒットにはならない。それもちゃんと計算していた。 新庄 ショートが二塁ベースよりに守っていたんで三遊間に転がせばヒットになると思った。(敬遠と思い込んで)遊撃手の気も抜けてただろうし…。でも、もうできませんね。これは1回だけ。もう敬遠もされなかもしれないし(笑い)。 プロ10年目、二刀流挑戦をはじめ、野村監督に野球を考える楽しさを教え込まれた新庄はここまで変わった。その監督は会心の笑顔で新庄と握手した後、「敬遠の球を打っていいですかと聞いてきたんで『今度な』と答えたよ。あそこは『行け、行け』やった」と超奇襲作戦を認めた。 熱闘甲子園、復活した伝統の一戦、今季ベストマッチは猛虎の新主砲・新庄のバットで阪神が勝ち、首位を死守した。信じられない形でもぎ取った勝利。ヒーロー新庄はお立ち台の最後を、これも信じられないセリフで締めくくった。「明日も勝つ!」。野村阪神が14年ぶりの夢へ突き進む、雄叫びでもあった。 <写真=こんなサヨナラ劇見たことない! 12回裏1死一、三塁、槙原(左)から敬遠のボールを狙いすましてレフトへ、新庄様、あんたはえらい>
槙原敬遠が…“しまった”原野手総合コーチと光山が田中球審に食い下がる。「新庄の左足が出ていた」。長嶋監督も光山のもとに行き、確認する。敬遠の球をサヨナラ打されたなんて信じたくなかった。が、判定は変わらず今季4度目のサヨナラ負け。後味の悪い連勝ストップになってしまった。「おそらく出ていないでしょう。(敬遠の球が)中途半端だったな」。長嶋監督自身、現役時代3度敬遠の球を打ちにいったことがある。それだけに、しばらく言葉を発さず、間をおいてから声を絞り出すように話した。 それにしても槙原が集中力に欠けた。今岡への3球目に暴投し、二塁走者を三塁に進めてしまう。満塁策を取るものの、中途半端に外した球で息の根を止められた。「出てたよ、足が、絶対。もっと外にはずすべき? そんなの知るかよ!」。声を荒らげたが、慎重さにも欠けていたのは事実だ。 田中球審(新庄のサヨナラ安打について)「我々は内野手が引き上げるまで何があるかわからないので、グラウンドにいる。それを(巨人側が)はみ出していると勘違いしたんじゃないの。あれは出てないよ」 4番・新庄、8回に同点9号清原に「お返し弾」
サヨナラの新庄を演出したのは、劇弾の新庄だった。野村阪神が誇る新4番打者・新庄の興奮劇は8回だった。マンモスから起こった歓声と、メガホン乱打音は地鳴りのごとく響き、その中心を新庄がレフトスタンドに飛び込む打球を見た。一塁を回ったところで赤いリストバントの右腕を突き上げ、跳び上がった。1点差、土壇場で貴重な同点9号ソロ、今季4番初アーチだった。 直前、村田真の勝ち越し2号が出た。ところが、この男のひと振りで試合を再び振り出しに戻してしまう。8回、1死走者なしから打席に入った新庄。巨人の抑えの切り札となった木村に果敢に挑む。そしてフルカウントからの9球目だ。141キロのシュートが低めに入ってきた。鋭く振り切ったスイングの先はオレンジ色の左翼スタンド。ライナーで飛び込んでいった。 「追い込まれていたので厳しい球はファウルで逃げて、甘い球を待っていました。打ったのはシュートです。よく飛んでくれましたね。とりあえず同点にできてよかったですよ」。4番の仕事ができる男はすっかりセリフも頼もしい。 返礼弾でもあった。前日、巨人清原が目の前で3本塁打を放ち、4番の仕事を見せつけられ、教えられた。言葉にこそ出さないが、「オレも」と念じたに違いない。その心意気がファンを熱くさせる一打になった。阪神タイガースの主砲は、紛れもなく新庄。それをファンに思い知らせる試合だった。 <写真=首位キープの大事な一戦、びっくりの敬遠ボールサヨナラ打にナインも総出で新庄様に祝福の嵐> 新庄、魅せた二塁守備初体験「楽しかった」打つだけではない。「セカンド新庄」も、この日の大ハイライトだった。11回裏は平尾に代え、ベンチ入り最後の野手大豊を代打起用。これで12回の守備に、内野手がいなくなった。だれや? だれが守るんや? だがそんなスタンドのどよめきをよそに、野村監督は迷わず指名した。「セカンド新庄」。平尾のグラブを借りた背番号5が、勢いよくベンチを飛び出すと、大観衆は沸き返った。 だが本当の見せ場は、2死後にやって来た。まるで狙い打ったように、強い清原の打球が新庄を襲った。だれもがかたずを飲む中、新庄は落ち着いていた。3バウンドで合わせると、軽く一塁へ送球し、3アウトチェンジだ。 「(11回の攻撃終了後)ベンチで言われたんですよ。緊張? いえいえ、楽しかったですよ。内野は前にもやってましたから」。とはいえ、最後の内野守備は7年も前の92年で、しかも三塁と遊撃。生涯初体験のポジションにも臆するどころか、守備位置から外野の守備陣型まで指示していた。「チョロイもんや。万能選手や。捕手だって、投手だって出来るゾ。まだ投手は立ち消えになってないからな」。演出したマジシャン野村監督の鼻息は、最後まで荒かった。 総力戦で首位キープ野手全員使ったベンチに残っている控えの野手は1人もいなかった。12回の守りには、なんと内野手がいないためセンターの新庄がセカンドに入った。手駒をすべて使い果たした総力戦。野村監督が見せた勝利への執念だった。 痛快だったのは、2点ビハインドで迎えた7回のミスターとのサイ配合戦だ。先頭の佐々木が右越え三塁打で出塁。星野が四球を選ぶと、野村監督は矢野に代えて桧山を送った。さらに一走には高波を起用。これを見た長嶋監督が、リリーフに河野を送って応戦。すると待ってましたと言わんばかりに、野村監督は代打の代打八木で勝負に出た。これがドンピシャリ。八木が適時打、高波が好走…まんまと、はまった。 「あそこは理想的な展開になったな。桧山への代打はいろいろ考えたけど、思ったようになった」。まさに痛快な同点劇だったのだ。 一方、ID回路がショート寸前になったのは、11回裏の無死満塁だった。新庄の三塁打でサヨナラ機を迎えると、巨人ベンチはジョンソン、佐々木を敬遠。阪神側の控え選手が大豊1人しか残っていないことを計算して満塁策を選んだ。打席は山田。野村監督は、じっと我慢した。 「一気に代打大豊とも思ったが、キャッチャーがいない。平尾にはキャッチャーいくかもしれんぞと言っていたが…あそこは我慢したんや」。 しかし選手会長の山田はあえなく三振。がっくりの野村監督は、次の平尾に代打大豊で勝負に出たが、捕邪飛でこれまた失敗。万策尽き果てたの感が漂ったが、それほどまで攻めに徹したサイ配が最終的に勝利の女神を手繰り寄せたのだった。 めまぐるしい選手起用。実に野村監督がベンチを出たのは12度を数えた。歴史に残る総力戦。そこには野村監督の勝利への執念、そして5万5000大観衆の前での打倒ミスターがあった。 坪井お膳立て激走坪井の激走が、新庄のサヨナラ打を呼んだ。延長12回、一塁左への内野安打で出塁。一塁ベースカバーの入来祐と交錯し、左ヒザの外側をひねって顔をゆがめた。ベンチに野手が残っていない事情もあり、根性の塊のような男は、痛みを押して立ち上がった。しかも、二進後、今岡への3球目がショートバウンドすると、ヘッドスライデイングで三塁を陥れた。直前、福本三塁ベースコーチから「ショートバウンドがあるからな」と注意を受けていたが、痛い素振りさえ見せない激走だった。 B砲出口見えず悩めるブロワーズに出口は見えない。2点を追う代打として7回無死二、三塁の場面で投ゴロ。さらに延長11回の2死満塁でも一塁邪飛に終わった。2試合続けて先発から離れ、4番を新庄に譲っているが、首脳陣には「出番があればいく」と前向きな姿勢を伝えてある。「結果が出ないのは野球の難しいところ。(スタメン落ちの現状を)望んでいるわけではないが、自分で決めることではないし」と淡々としていた。 佐々木、逆転の口火ベテラン佐々木が大逆転劇の導火線に火を点けた。2点差の7回の先頭打者、斎藤雅から右翼越え三塁打。同点の起爆剤となり、一気に流れを引き寄せた。2回にも、一時1点差に詰め寄る右前適時打。「ドン詰まったけど、イイところに落ちてくれた」。8日の広島戦で移籍第1号を放ってから、4試合連続安打。2軍落ちも味わった元首位打者が、いよいよ盛り返してきた。 福原3回をピシャリ6勝セ・パ通じルーキー・トップタイその時、福原はエンドレスの延長戦に備えて、ベンチ前でキャッチボールをしていた。「アッ、って感じですね」。打球音と歓声に気付いて振り向くと、新庄が一塁を回っている。気迫のロングリリーフが報われた瞬間だった。 「試合が決まるまで、自分がいくつもりでした」。ルーキー・セットアッパーは堂々と胸を張った。延長11回裏、自軍が無死満塁のチャンスを逃した。チャンスの後にピンチあり。野村監督は「嫌な予感がしたんだ」と打ち明ける。しかし、福原は大熱戦の中でも冷静だった。「八木沢コーチから、次もいくぞって言われてたし、気持ちは切らないようにしてました」。10から登板。12回は3イニング目に入ったが、清水、松井、清原の恐怖の3人を3者凡退に封じ込めた。「(疲れも)逆に体の力が抜けてよかったんじゃないですか」。自己最多の投球数50球にも、心地よさそうに汗を拭った。 これで、チームトップの6勝目。そして、巨人上原に並んだ。セ・パを通じてルーキー・トップタイ。「うれしいですね。実感はあまりないですけど」。入団時は無名に近かった福原が、新人王レースに名乗りを挙げた。 川尻「清原3打席3K」7回途中降板するまで、浴びた安打は11本。それでも、わずかに3失点。川尻が『IDピッチング』の本領を発揮し、復調した。「自分なりの粘りのピッチングはできたと思う」。初回は4安打、2回も3安打を集中されたが、いずれも1点ずつで乗り切った。圧巻は前日11日3本塁打した清原封じ。シンカーとカーブを駆使して3打席3三振。勝利は、今回も手にすることはできなかったが「白星? どこ行っちゃったんだろうね。まあ、そのうち来るだろう」と笑い飛ばした。 遠山Gキラー健在Gキラー遠山は健在だ。2点リードされた7回1死一塁で、左腕遠山が2番手で登板。松井を左飛に仕留めると、清原四球後、高橋も二ゴロに封じた。その裏の同点劇を呼び込む熱投だった。これで、松井、高橋のMT砲には、9打数1安打。わずか1割1分1厘という圧殺ぶりだ。「巨人戦で燃えるのは、前と一緒だね。お客さんの熱気も伝わってくるよ」。ルーキーの86年7月30日、先発で巨人相手に白星を勝ち取った。あれから、13年がたったが、熱いハートは変わらない。これで、今季の対巨人、6イニングを投げて、わずかに1安打。初夏を迎えても、遠山桜は渋く咲き続ける。 (29勝25敗) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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