第30戦(5月11日)

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鳥ハダ立ったよ「貯金4」

これぞエース!藪完封

 藪だ3連勝だ7年ぶりの貯金4だ。阪神はエース藪がヤクルトを6安打に抑え完封勝ち。村山、江夏に負けない頼れる大エースに成長した。今岡が先制打を放ち、3番新庄も快打をみせた。首位中日が敗れたためゲーム差は3となった。最短なら15日の土曜日に単独首位の座をもぎ取る。

5月11日・甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
ヤクルト
阪 神
【勝】藪【敗】ハッカミー


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竜捕らえた「3差」だ!

 虎党の「頑張れ、藪、あと一人」。2万8000人のコールが後押しする。9回2死二、三塁。今季自己最多の142球で代打・青柳を三塁ゴロに仕留めた。グラブを叩いて笑顔をみせる。ヤクルト戦2試合連続完封に甲子園の観衆はバンザイまたバンザイだ。「チームが一丸となって頑張っている結果です」とお立ち台でヒーローが言えば、スタンドが絶叫で答える。

 見事な投球術だった。右打者の胸元をえぐるシュートに、鋭いスライダーにチェンジアップ、フォークボール。捕手の矢野との呼吸もピッタリだった。それでもピンチは2度来た。3点の援護をもらった直後の5回、スミス、宮本に打たれ、代打・小早川に四球を与えて2死満塁。絶体絶命の場面で真中をストレートで空振り三振に打ち取った。「先制点を取ってもらった直後。流れを変えてはいけないと…」。両手のこぶしを握り締めた藪の姿は気迫の表れだった。

 7回、無死満塁も、藪はしのいだ。宮本を遊飛に取ったあと、副島、真中を連続三振。ヤクルトに過去2試合で1点しか許していない絶対的な自身が支えだっった。

スタメン
阪 神ヤクルト
坪 井真 中
和 田土 橋
新 庄古 田
ブロワーズペタジーニ
ジョンソンスミス
平 塚高橋智
矢 野岩 村
今 岡宮 本
 藪 ハッカミー

 藪にとって、こんなやりがいのあるシーズンは初めてかもしれない。1994年に入団してから投手陣の柱として頑張ってきたが、チームは常に下位に低迷。中でも野村ヤクルトには96年から翌97年まで6連敗し、97年は0勝5敗と1つも勝てず。「高い打率の打者がいるわけでもないのに、打たれてしまう。イヤな形で点を取られる」。そんな苦手意識の中心に野村監督がいた。その敵将が今では一塁側ベンチで指揮を執る。「昨年まで監督自身のチームだったので、やはり戦略とか、わかっておられるようです」。10日の練習後、貯金4は7年ぶりと聞いて「本当? その時はまだ自分はいないじゃない」と目を丸くしたほどだった。

 これで首位中日に3ゲーム差までせまった。14日からの直接対決(甲子園)は首位決戦に姿を変えた。藪は「仮にうちが上に立ったとしても、昨年最下位だった僕らは追う身。変なプレッシャーはありません」と平常心を強調する。野村監督も「週末から首位争い? 何を言うとんのや? 騒ぐのは新聞紙上にお任せしますわ」と一笑に付す。それでも2位になった92年以来、阪神ファンが待ちこがれた首位争い、そして首位の座は手を伸ばせば届く所にある。

<写真=“よっしゃ、完封だ!”藪は5回、2死満塁のピンチで真中を三振に仕留めガッツポーズ。本拠地で負けないエースの存在感を植え付ける>

藪ヤクルト戦防御率0・34

 <データセンター> ▼藪がヤクルト戦で2試合続けて完封勝ちをおさめ、対戦防御率を0・34とした。藪は今季初の顔合わせとなった4月16日の対戦(福岡D)で8回まで0点に抑えたものの、9回に1点を許しサヨナラ負け。これに奮起したのか、次の対戦の4月23日(甲子園)で5安打完封の好投を見せていた。昨年のこのカードでも2勝1敗、防御率1・76だっただけに、自信を持って投げられるようだ。また、この勝利で3勝目となったが、球場別の成績は

 球 場  勝―敗  防御率
 甲子園  3―0  1・07
 その他  0―3  3・14

 ホーム甲子園では3試合に登板し、2完封を含む3連勝。25イニング1/3を投げ、まだ長打を1本も許していない。

八木沢コーチ「ホッ」

 右足ふくらはぎ肉離れに苦しむ八木沢投手コーチも、藪の粘投に胸をなでおろした。7、8日の横浜戦(横浜)では投手陣がメッタ打ちにあい、何度もマウンドに足を運ぶうちに右足の故障が悪化。現役時代は完全試合を成し遂げた快腕もパンク気味だった。だがこの日は5回2死満塁で1度、藪のもとに行ったきり。「横浜戦では投手が失点を重ねたので、早い時期に名誉挽回できてよかった」とエースの完封をたたえた。


3番新庄が2塁打2本

今岡も“復活”V打

 野村起用に、今岡、新庄がこたえた。5月に入ってヒット0と絶不調だった今岡の今月初安打が、チームの勢いに乗って先制の2点タイムリーとなった。しかも、ハッカミー対策で3番に入った新庄が2二塁打とスクイズ激走で2万8000人の虎ファンをうならせる。ジョンソンが打たなくても、日替わりヒーローが出る阪神。ほんま、強いですわ。

新庄がスクイズで“激走”セーフ

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 長かった。打球が二遊間を抜けるのを見て、今岡は胸をなでおろした。5月に入って初めての安打。これが先制の2点適時打。大スランプに陥っていた今岡に、ようやく光明が見えた。

 「久しぶりのタイムリーなので、ほんとうにうれしいです」

 4回、矢野が四球を選んで2死満塁。「初球から行こうと思ってました」。四球の後の初球を狙え―。悩みに悩む今岡にとって、積極性を取り戻す状況が整った。ハッカミーの初球。外角直球を迷いなく振り抜いた。4月30日以来11日ぶりとなる安打。適時打となると、同25日以来、12試合ぶりの快感だ。

 5日の巨人戦からスタメン落ち。8日の横浜戦で復帰したものの6タコ。翌9日は再びベンチを温めた。この日は、今季初の8番でのスタメン。野村監督の信頼を失いつつある中で、早出特打も行い、この一打で意地を見せつけた。

 「ドサクサで打ちよった。おもしろい選手だね」。今岡のスタメン起用が当たった野村監督も笑いをかみ殺した。30試合目で早くも20通り目のオーダー。この打線の組み替えが、ズバズバ当たる。新庄を3番に抜擢。平塚を10試合ぶりにスタメンに戻した。すると、新庄が2安打、平塚も先制機を広げる貴重な安打。「新庄の3番? 130キロの真っすぐならついていくからな」。初対戦となるハッカミーも、自慢のID解析で攻略した。

 4月21日以来の3番に座った新庄も大ハッスルだ。7回、この日2本目となる痛烈な安打を左前へ。左翼手高橋智がファンブルする間に二塁を陥れ、ダメ押し4点目の口火を切った。「(左翼手が)もたついてたでしょ。ああいうところは行かないとね」。好走塁も当然の口ぶり。心身ともにノッている証拠だ。

 貯金4は、新庄が鮮烈デビューを飾った92年10月以来。優勝を最後まで争った緊張と興奮がよみがえりつつある。だが、新庄はあえて邪念を振り払った。「貯金4? そんなの関係ない」。今岡とて、“借り”を返すことだけで必死。「まだまだ(スランプは)振っ切れてないですよ」。日替わりオーダーによるチーム内の激しい競争が、好調な打線の原動力となっている。

<写真=7回1死満塁、矢野の投前スクイズで三塁走者新庄がダメ押しの生還。左は広田投手>


8年ぶり、ヤを5タテ

天敵ツバメ今や“カモ”

 大歓声の中、ベンチに戻ってきた矢野の頭を野村監督は黄色いメガホンでポカリとやった。「転がすのが正面過ぎるやないか!」。しかし顔はクシャクシャの笑顔だった。

 3点リードながら流れがヤクルトに傾いてもおかしくなかった終盤。7回1死満塁から打撃好調の矢野に監督はスクイズを命じた。カウント1―2からの4球目。球は投手広田の前に転がり、捕手古田へグラブトス。一瞬、きわどいタイミングだったが新庄の足が速かった。

 「俊足の新庄だからセーフになった。古田が警戒してないからやったんだけどね。こないだのこともあるし、どうしても1点欲しかったから」。そう苦笑した監督だがヤクルトを知り尽くした上での作戦だった。

 ヤクルト時代に自ら再生させた広田の特徴は、球を低めに集めて飛球を上げさせないこと。「だから犠飛は打ちにくいなと思ってな。それで(ヤクルトで)助けてくれたんだけどな…」。そう振り返った。

 これでヤクルトに5連勝。昨年までカモにされていたことを思えばまさに逆転現象だ。これ以上、あからさまな野村効果はない。「まあ若松はやりにくいやろ…。新戦力以外は熟知されてんだからな…」。監督もごまかさずハッキリ言い切った。

 ヤクルト戦5連勝は8年ぶりだ。そして貯金「4」は7年ぶり…。「ん〜? 『ぶり』が多いな。はやらせれば? 『ぶり』を…。流行語にならんか?」。監督はそう笑った。最終的に『14年ぶり』が実現すれば流行する可能性は高い。

音なしJ砲…ゴメン

 ジョンソンの甲子園5戦連発はならなかった。3打数で無安打、三振に併殺打もあって、この日はいいところなし。試合後は「ゴメンナサイ。こういう日もあるよ」と巨大な体を小さくさせて地元ファンに“謝罪”だ。またブロワーズも四球と遊ゴロが2つずつ。両外国人が無安打は4月2日の開幕戦以来だった。「今は我慢する気持ちを試されている。今日も甘い球が来たが、打ち損ねてしまった」とブロワーズは振り返っていた。

平塚好機広げる安打

 平塚が6番左翼で4月28日以来のスタメン出場。4回の3得点のキッカケとなる右前打を放つなど働いた。「調子が悪いなりに勝ちに貢献できた。久々のスタメン? 自分ではいつでもいけるように準備していた」と話した。前日はジョンソンの後を打つ6番が大事と話していた野村監督は「しばらく試合に出ていなかったしね…」と笑顔を見せていた。

4月18日以降、セで勝ち越しは阪神だけ

 <データセンター> ▼阪神のヤクルト戦5連勝は91年の22〜26回戦以来、8年ぶりになる。7連敗した4月17日時点の阪神は3勝9敗で首位から8ゲーム差の最下位だったが、18日以降はこれで14勝4敗の勝率7割7分8厘。4月18日以降、セ・リーグで勝ち越しているのは阪神しかない。4月17日時点ではリーグ最低の2割2分1厘だったチーム打率が、18日以降の18試合は3割8厘へアップ(防御率は4・21→4・00)。打線に当たりがでてきたおかげで、それまで先制したのは3試合しかなかったが、18日以降は18試合のうち12試合で先取点を奪って試合を有利に進めている。

(17勝13敗)


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