第24戦(5月2日)

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秀太V打で10回サヨナラ

5点差逆転!!ノムさん興奮

 大逆転だ、サヨナラだ! ハラハラドキドキの4時間24分ドラマは延長10回裏、2死満塁で田中秀太内野手(22)が殊勲打。野村監督も初のサヨナラ勝ちに愛弟子の頭をたたいて大喜び。5万5000人の大観衆の前で逆転サヨナラ勝ちをおさめ5割に戻した。3日から宿敵巨人を迎撃して、貯金街道へ突入だ。

5月2日・甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
広 島
阪 神 1X
【延長10回】
【勝】伊藤【敗】小林幹
【本】ジョンソン6号(3ラン=山崎)新庄2号(2ラン=玉木重)


5割復帰!3日からG叩きで貯金や

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 一度はプロの世界に限界を感じた男が、大仕事をやってのけた。ナインにもみくちゃにされるうちに、目頭が熱くなった。すでに三塁走者は本塁に還り、ゲームは成立。しかし、田中の興奮は止まらない。一塁を蹴り、二塁も走り過ぎてしまう。遊撃手の守備位置付近で一塁走者の坪井と抱き合うまで、ひたすら走り続けた。

 「一生懸命にまさる美しさはない。必死だわ、ホントに」。二、三塁間にできた喚起の輪を見つめる野村監督も、思わずしんみり。最後に戻ってきた田中の頭を思いっきり抱え込んだ。2度3度、手荒い祝福の平手打ちをヒーローの頭にお見舞いした。最上級の愛情表現だった。

 「打席に立ったら、お腹がキューッて締め付けられた。緊張した。ホントに、打ててよかった」

 7―7の延長10回、2死満塁、フルカウント。田中は真っすぐ一本に絞った。そこに直球が来た。短く持ったバットでコツンと弾く。打球は前進守備の左翼手金本の頭上を超えた。今年初めての5万5000人超満員を総立ちにさせたのは、無名の若虎だった。

スタメン
阪 神広 島
坪 井ペレス
和 田笘 篠
川 尻前 田
ブロワーズ江 藤
ジョンソン金 本
今 岡緒 方
矢 野ディアス
新 庄瀬 戸
中 込山 崎

 「代打かな」。大チャンスで打席に向かう田中はベンチをチラッと見た。しかし、野村監督は動かない。「若い子を育てなあかん。いい経験だということもあってな」。野村監督の目を見た田中は、腹を決めた。「毎日試合に使ってもらってたんで、何とか期待にこたえたかった」。指揮官と選手が一体となった。野村阪神が第1歩を踏み出した瞬間と言える。

 「ボクじゃ、無理なんですよ。もうやめようかな、野球」。こんな弱音を漏らしたのは、2年前のキャンプの頃だ。高卒1年目で1軍に昇格するなど、そのセンスは早くから注目されていた。しかし、その後はなかなか1軍に上がれない。すべてが本音ではないにしても、伸び悩む自分に嫌気がさしていた。

 それが、再びヤル気を燃やしたのは、野村監督のひとことだった。今年のキャンプ中、野村監督から「自己犠牲ができるな」と評価された。この言葉がうれしかった。「よく見てくれている監督なんだな。監督が言うように、困っている人がいたら、放っておけない性格ですからね」。こんな性格を短期間で見抜いた野村監督の元で、自己犠牲に徹しようと決めた。

 「1人でチビチビとお酒を飲みながら、満足に浸れるような仕事をしたい。あの四球、あの進塁打が効いたんだ、ってね。だから、自分の名前が新聞に載らなくてもいいんですよ」

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 だが、この日ばかりは、文句ナシの1面のヒーロー。「お立ち台? やっぱり気持ちいいですね。2軍でもサヨナラヒットは打ったけど、2軍とは全然違いますよ」。今季初のサヨナラ勝ちを決めたヒーローは、目を赤くはらしながら、とびきりの笑顔を浮かべた。

 前半の5点のビハインドも打線はあきらめなかった。リリーフ陣も追加点を必死で防いだ。最後は伏兵が決めた。今季初のサヨナラ勝ち。勝率5割復帰。しかも、勝ち方は最高。3日からの巨人戦には、間違いなく上げ潮ムードで臨める。宿敵長嶋巨人をたたきつぶし、待望の貯金を手に入れる。

<写真上=延長10回、満塁のチャンスに田中は左中間にサヨナラヒットを放ち、一塁走者坪井(右)と抱き合って喜ぶ。左は駆け寄る矢野 写真下=ベンチ前で野村監督から手荒い祝福を受ける田中>

田中秀太(たなか・しゅうた)

 ◆生まれ 1977年2月23日生まれ、熊本県出身。血液型はAB型。179センチ、70キロ。独身。年俸550万円。

 ◆球歴 高3時、父久幸さん(52)率いる熊本工でセンバツ出場したが、初戦敗退。94年日本・キューバ選手権では高校生ながら全日本代表入り。94年ドラフト3位で阪神入団。

 ◆ラッキー君 昨年は1度も1軍に上がれず、プロ通算5年間でも試合出場はわずか4試合だった。だが今年の春季キャンプ終盤に、今岡が急性腸炎でリタイア。田中は当時2軍だったが、たまたま雨が降り室内で行われた練習を視察した野村監督が「あの60番はエエな」と代役に指名。今岡&雨という2つの偶然からチャンスをモノにし、今では和田の守備固めにまで成長。今季プロ初安打も、自慢のバントヒットで記録した。

監督さんに感謝します

 田中秀太の母京子さん(49)の話 打席に立たせて下さった監督さんに本当に感謝します。今年はしょっちゅう主人(久幸さん=52は熊工監督)に電話をかけてくるようになりました。試合に使って頂けて、(親に)聞いてもらいたい話もいろいろとできてきたんでしょう。故障にだけは気をつけて頑張ってほしいです。

今季7度目逆転勝ち

 <データセンター> ▼阪神の5点差逆転勝利は97年7月16日、ヤクルト17回戦(神宮)以来、約1年5カ月ぶり。その試合は7回まで5―10とリードされていたが、終盤8回表に5長短安打、2四球と相手失策でイッキに7点を取って逆転した。昨年はチーム52勝のうち、2点差以上の逆転勝利は7試合しかなく、2点差逆転は5試合、3点差は2試合、4点差以上の逆転はなかった。なお今季、この日の勝利まで12勝している阪神だが、うち逆転勝利は7試合もあり、特に4月後半からは粘りが目立ち、30日の広島戦でも3点差を逆転している。


新庄千金2ラン!J砲3ラン

ID野球学んだ成長の跡

 新庄がジョンソンが一発攻勢で大入りの甲子園を沸かせた。ジョンソンが2日連続の6号3ランで反撃のノロシをあげれば新庄は2号2ラン。坪井も本塁にスーパー返球と3日から始まる今季初の甲子園巨人戦に最高の弾みがついた。

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 ヒーロー田中に、新庄は飛び蹴り。ジョンソンは抱きついて雄叫びを挙げた。殊勲者の座は譲っても心底、勝ちがうれしい。今季初の5点差をひっくり返した準主役は、紛れもなくこの2人。真昼の打ち上げ花火2発が、甲子園劇場を興奮の渦に巻き込んだ。

 大逆転ドラマの序章は、ジョンソンの号砲だった。「強い逆風だったんで、『入れっ!』て祈りながら走ったよ」。5点を追う5回2死一、二塁。山崎のスライダーを捕らえた打球は強い浜風をモノともせず、左中間最深部に突き刺さった。直前の守りで3点を失い、敗色濃厚だったムードを「ひょっとして」に変えた2試合連続の6号3ラン。「子供(長男トレーバー・マーク君=1)が喜ぶから、部屋をこの人形でいっぱい飾りたいんだ」。前日に続き、2個目のトラッキー人形を大きく掲げたポーズで1点差。チームは一気に波に乗った。

 そして6回、新庄が第2幕をド派手に演出した。ガッツポーズが飛び出したのは無死一塁。玉木重のスライダーを捕らえ、左翼席に逆転の2号2ランを突き刺した瞬間だった。5点差をひっくり返す当たりに、マンモスは総立ちで万歳万歳を三唱。興奮のアドレナリンが全身を駆け巡った背番号5は、そのスタンドにグイと右腕を突き上げた。

 「大事な場面でしたからね。スライダーに絞ってました」。自画自賛の一撃は、まさにID教室で学んだ成長の跡。一時は「アイツだけは分からん」と酷評していた野村監督も「きのう直球を2本ヒットして、変化球ミエミエの読みやすい状況を自分で作りよった」と、ニンマリの意味深い一発だった。

 今季任されたプロ初の8番に「次はピッチャーだから、自分が打たないとって責任を感じて力んで…。気分的にも重い」と悩んでいた日々がウソのよう。10回にもサヨナラのお膳立てを作る左前打を放ち、2度目の猛打賞をゲットした。5日の巨人戦には、恋人大河内志保さん(27)も駆けつけるが、今季好成績で結婚を果たすためにも、前進は止められない。

 「新庄もジョーンズもよく打ってくれた。負けたらいっぱいバ声を浴びるところやったで」。7回一時同点にされたとはいえ、野村監督が思わず、ジョンソンをジョーンズと名前を間違えるほど興奮した2人の千金アーチ。夢を運んだS&J新コンビに、拍手喝采だ。

 柏原打撃コーチ「ベンチから田中に、高めを捨てて低めを狙え、と声をかけた。新庄は3打席目からきれいに打っていた。ジョンソンもいいところで打ったね」。

<写真=6回、新庄は、左越えに逆転2ランを放ち、笑顔でガッツポーズ>


伊藤またまたピシャ3勝目

中継ぎの意地、ロングリリーフ3回

 8、9、10回の3イニングを0封した伊藤が、今季3勝目だ。「きょうは秀太(田中)だよ。(スポーツ紙)の5面くらいつくってやってよ」と、サヨナラ打の殊勲者をたてたが、自らの投球も完ぺきな内容。先月24日のヤクルト戦で2番手として4回2/3を投げて以来のロングリリーフで、勝利に貢献した。

 野村監督の信頼を感じたのは9回裏だった。1点取ればサヨナラ勝ちとなる場面で、先頭の打席が回っていた。代打を出されてもおかしくなかった。が、野村監督の指令は「お前が最後まで投げろ」。意気に感じた。「最後まで投げるつもりでした」。10回は3人で切った。最後の打者前田を2ゴロに仕留めると、思わずガッツポーズをつくっていた。

 中継ぎ陣の意地だ。先発中込が4回で降板しても、2番手井川が1死も取れずに3点を献上しても、試合をあきらめるわけにはいかない。1イニングを投げた3番手葛西、2イニングをつないだ4番手遠山のためにも、負けられなかった。


坪井がスーパー返球

5タコも守備で貢献

 打てなければ守備で貢献する。坪井が、ドンピシャの本塁封殺でピンチを救った。7―7で迎えた9回表1死二塁。広島野村の右前打を捕球すると、大きく反動をつけバックホーム。送球はワンバウンドで、本塁ベース上の捕手矢野のミットに収まった。三塁をまわり一気に本塁を狙った。だがディアスが本塁に来る2メートル手前で返球は矢野のミットに収まっていた。ディアスは、体当たりもに行ったがタッチアウト。サヨナラ勝ちへのムードを作ったのは、まぎれもなくこのバックホームだった。

 実は守備は坪井の課題でもある。4月27日の中日戦、30日の広島戦では失策を記録。この日も4回、本塁封殺を狙った送球が大きくそれ、広島に3点目を献上している。同じ間違いを犯すわけにはいかなかった。試合後は報道陣の前を足早に通りすぎた坪井だが、会心の本塁送球には満足しているはず。

 3日の巨人戦ではガルベスが先発する。昨年ガルベスが蛮行をふるった因縁の試合で最後の打者になった。その坪井がガルベスに対する第1打者としてバッターボックスに立つ。これも何かの因縁…。ここ13打席ヒットが出ていないが、好返球、そして因縁のガルベスとの対決と打撃復調へのきっかけをそろった。


井川散々デビュー

 井川にとって散々なデビューとなった。5回から2番手として登板したが、3死四球を与えた後に金本に適時打を浴びる始末。5万5000人の大観衆に緊張し、わずか18球で一死も取れずに自責点3で降板した。交代劇のドタバタもあり試合後は何を聞かれても「…」と首を傾げるだけ。八木沢投手コーチも「ブルペンとはフォームも違った」と、ひょうへんぶりに驚いていた。

(12勝12敗)


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