アーチなしで 巨人に勝ち越し
ベンチと選手見事に融合
「福本さん、殊勲賞やね」と、松井ヘッドが笑って指でOKサインを送る。福本コーチも「アウトになってたら、ボロカスのとこや。良かったわ」と笑顔を浮かべた。試合終了直後、ロッカー前の光景だった。
1―2で迎えた6回だ。新庄、ブロワーズが初球攻撃で連打を浴びせて、チャンスを作った。1死後、和田が持ち前のしぶとさを発揮して同点タイムリー。その直後だった。桧山がまた上原の初球をたたいて、三遊間を破った。
二塁走者のブロワーズはライナー性の当たりに、いったん二塁ベース方向へ戻る。抜けたと判断してスタートを切ったのは、打球が青々とした外野芝生の上を滑るように転がってからだった。左翼清水の動きと、ブロワーズの走塁を見比べていた福本コーチは、それでも腕をグルグルと回して、本塁突入を指示したのだ。返球より一瞬早くホームイン。貴重な勝ち越し点だった。
「レフトの守備位置が深かった。しかも向かい風。さらに清水は肩があまり強くはない。思い切って突っ込ましたよ」と福本コーチ。もし返球が良くても、ブロワーズには大リーグ仕込みの荒々しいスライディングがあることも、計算済みだった。上原からは、そう多くの得点は望めなかっただけに(現にこの勝ち越し点が最後の得点)、三塁コーチの見事なファインプレーだった。
この3連戦、阪神も巨人もともに合計11得点をあげた。巨人が本塁打で10点(それ以外は1点)取ったのに引き換え、阪神は1本のアーチもなかった。それでいて2勝1敗。ベンチと選手が融合した一丸の野球が、突出した打者でしか点を奪えなかった巨人を倒したのだった。
「うまいことハマッたで。田村が出て来て少しは(継投も)ゆとりを持ててきた」とはバッテリー担当の黒田コーチだ。バッテリー部門では、この3連戦、徹底的に清水封じの作戦だったようだ。内角を大胆に攻めて、清水は13打数0安打(1四球)。松井、高橋の前に走者を出さない策が、巨人から破壊力をそぎ取った。「今回は確かに清水の迷いを引き出したと思う。しかし、これから先があるからね。また研究」と黒田コーチも笑って言った。
渋く、しぶとく巨人戦に勝ち越して、首位中日にもう0.5差。北陸シリーズ(対中日3連戦)で“TOP”の夢がかなうところまで、阪神はこぎつけた。
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