プライドよりチーム “川尻中継ぎ”
選手はそのために存在する
巨人の“ラッキー7”が始まる直前のことだった。にぎやかさでは人後に落ちないトラ番高原が記者席で甲高い悲鳴をあげた。「ギャー、見て見て、見てくださいよ、これ」。左手に持って、今まさに飲もうとしたコーヒーの中に、巨人ファンが飛ばした青いジェット風船が落下・直撃したのだ。
ガルベスの満塁本塁打が2回に飛び出した。3回には松井がバックスクリーン右へ、続けさまに高橋が左へ連続本塁打をぶっぱなす。阪神ファンにすれば、面白くないことおびただしい試合展開の見事なとどめのホールインワンであった。
9回、阪神は最後の意地を見せて反撃、2点差まで追い上げたが、和田の二ゴロでゲームセット。伝統の一戦は4―6で幕を閉じた。巨人の本塁打攻勢が序盤だけで終わってしまったからだろうか。試合が終わって、ふと思った。もし、野村監督が巨人の監督であったとしたら、この勝ち試合を喜んだだろうか、と。
実はこのゲーム、巨人のハデな力を誇示したように見えたけれど、スキだらけの一面も露呈している。攻撃ではガルベスの満塁弾が出た直後、四球で出塁した清水がケン制で殺されたのが発端だった。5回は後藤が二盗失敗、6回はガルベスがバント失敗、8回は新庄の強肩に本塁寸前で川相が憤死と、本塁打以外ではついに1点も奪えなかった。守備でも8回は捕逸が出たし、9回は元木のエラーなどでドタバタぶりを発揮してくれたのだった。
「確かにそうかもしれないね。だけど今日の野村監督のやり方で注目したのは、川尻の中継ぎ登板。精神的な立ち直りを図るのであれば十分に理解できるが、フォームや疲れの問題だったらどうだろうか」と本紙評論家の稲尾和久さん。3回から川尻を中継ぎで登板させ、MK砲に連続アーチをかけられた所を、稲尾さんは指摘したのだ。
川尻本人には複雑な心境になる登板だったろうが、選手はチームのために存在するのだ、という野村監督の信条は、選手のプライドよりも大切なものがあるという意味を包含している。とするならば、それは当然のことだったかもしれない。
巨人3連戦の初戦を落とした。しかし、負け惜しみめくが、巨人に本塁打がなかったら、“楽勝”の試合だったのだ。今日は高原のコーヒーではなく、巨人直撃と行くのは、別に大した夢でもない。
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