逆転の礎築いた桧山、竹内
与えられた仕事「丁寧に」
やたら派手な試合にふさわしいプレ・イベント。阪神ファンで鳴るABCの道上洋三さんが、試合前満員に埋まった甲子園のマウンドで「六甲おろし」を朗々と歌い上げたのだった。
中日のベンチに向かって「どうぞお手柔らかに」というアイサツも道上さんはチャッカリしている。それが良かったのか、中日ナインは結構お手柔らかだったのだが、日本語が通じないゴメスだけはシャカリキで1、3回に2打席連続2ラン本塁打。これを阪神が追いかける展開になった。 守りでも大活躍の新庄が3安打3打点、坪井が決勝タイムリー、さらにBJ砲の連続二塁打も出た。派手な極彩色の逆転劇の中で、しかし地味ながら堅実に自分の仕事をこなした淡色の男たちが、この逆転劇の土台を築いたように思う。
7番に入った桧山。中日の先発は意表をついた左腕山本昌で桧山は昨季、この山本昌には14打数1安打に抑えられている。試合開始から“交代の危機”を感じながらのプレーになった。1打席目に右前打、しかし4回の無死一塁では二ゴロ併殺に終わった。次の5回には、メイの代打で平塚が出る。「代えられるのではないか、と観念した」そうだが、6回からもレフトを守った。
6回には四球、同点の8回は先頭打者で2―1から粘って四球を選んだ。この出塁が効いて、坪井や新庄の適時打に結び付いたのだ。「別に四球を…という気持ちではなく、いい結果を残したい、と。ただ打席では丁寧に行こう、とは思ってましたね」と桧山。代走に高波が出たから決勝点のホームは踏めなかったけれど、顔は晴れやかだった。
不調のメイに代わって6、7回を3人ずつで抑えた竹内もシブい働きだった。かつてのローテーション投手は今、2軍からはい上がって中継ぎをこなす。彼も桧山同様、今与えられた仕事をひたむきにこなし、逆転を呼ぶ礎となったのだった。
「だれを(2軍に)落としてだれを上げるか。毎日そんな話ばかりしている」と野村監督。“危機”をはねのけるためには、ほかならぬプレーをする人間が丁寧に仕事をし続けるしかないのだろう。逆転劇がすべてを幸せにした阪神の構図。「いやあ、今日は最高!」。試合後、通路ですれ違うと、そう道上さんは叫んだ。中日を破ったこの1勝は、妙に感動的であった。
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