星野ネバサレ野球2年目の結実へ


背水・的場「第一関門突破」に笑顔

ファーストストライク打って安打

今年は優勝や

 安芸から40キロ。室戸の二軍宿舎の木戸監督の部屋に電話が入ったのは19日だった。1軍からの要請だった。「明日(20日)の紅白戦に的場を連れてきてくれ」。

 的場? ピンとこない。ファンも同様の反応だった。長嶋茂雄さんが来て、大盛り上がりの中、スタートした紅白戦。スターティングメンバーの発表で、1万3000人が詰め掛けたスタンドから歓声が起こるのに、紅組7番、レフト的場には正直、無反応に近かった。

 ドラフト戦略で成功しない阪神の象徴的な例とされた。安全策に走り、いつも大物を逃がしてきた阪神のドラフト。不作といわれた99年度のドラフトも早くから的場に決めたが、他球団のスカウトから「なんで1位なの? 」との声を聞いたこともある。

 忘れられたドラフト1位。本人も忘れてしまいたかった。「いつもドラフトの季節になると、過去の1位として名前が出る。3位か4位でよかったのに、と思い続けてました」。1年目、左ひざを痛めた。オフに手術したが、2年目に再び故障。また手術だ。着替え中に見たひざにはドス黒い手術跡がくっきりと残っている。

 首を覚悟していた。ところが3年目となる昨年のコスモスリーグで試合に出て、初打席でホームランを放った。この1本で首がつながった。「それからかな、野球の見方が変わったのは。特に精神的な事で、もう後ろを振り返らない。前しか見ないという風になりました」。

 紅白戦では石毛からヒットを放った。それより考えていたことができたのがうれしかった。「すべての打席でファーストストライクから打っていく」。これができた。だから「第1関門は突破」と笑った。

 内野手で入団したが、ひざの状態で外野しかできない。「まだ不安はあるけど、アイツは1軍に近い所にいる。それだけの力を持っています。シーズン中の1軍入りもあるんじゃないですか」と木戸2軍監督は押す。さらに昨年まで的場を見てきた岡田コーチも「こうやって1軍の紅白に出るのも、励みになるし」と言った。

 星野監督の口からは「的場」の名前は出てこなかった。そんなことはどうでもいい。夫人と10カ月になる愛娘と撮ったプリクラをひさしの裏に張ったヘルメット。それを持ちながら「今年1軍に上がらないと、ホント、首ですから」とニヤッとした。

【内匠宏幸 編集委員】


2003年2月21日付紙面掲載 


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